住み方の話

住み方の話

私たちはどんな家に、どのように住めばいいのでしょう? マンションか一戸建てか? 新築するのかリフォームか?
これは家づくりの永遠のテーマです。

結論から言うと、このテーマに正解はありません。
なぜなら、そこに住む人の状況、家族構成、仕事、年収、好み、優先順位や将来設計などが人それぞれだからです。
このコンテンツでは、それぞれの「住み方」に焦点を当て、どんな特徴があるのかを具体的にご紹介していきます。
自分に合った「住み方」をぜひ見つけてください。

マンションと一戸建て、どっちがいい?

マンションと一戸建て、どっちがいい?

マンションと一戸建てを比較する時、大きなポイントとなるのが
「部屋の広さ」
「庭の有無」
「隣人の近さ」
「管理の作業量」
です。

  • あなたは広い部屋が好きでしょうか?
  • 庭は無くても平気でしょうか?
  • 隣人とのお付き合いはどうでしょうか?
  • 家に手をかけ、世話をする気持ちはありますか?

他にも色々な違いがありますが、まずはこの4点で自分がどちら側のタイプなのかを測ることができると思います。

マンションと一戸建ての広さの違い

一般的な分譲マンションの広さの平均は60~70㎡、間取りは3LDKと言われています。
これに対して一戸建ての広さの全国平均値は108㎡となり、マンションのおよそ1.6倍となります。
国土交通省「住生活基本計画(全国計画)における誘導居住面積水準及び最低居住面積水準」では、快適に生活するために必要な広さは3人家族で100㎡、4人家族で125㎡とされており、3人以上の家族の場合、マンションにおいては「広さ」に関する快適性は低いと言えるでしょう。

ただこれも、東京や大阪といった都市部に住むのか、地価の安い地方に住むのかで条件は大きく変わってきます。
下図のように都道府県別に見た際に、最も狭い面積と最も広い面積では、2倍以上の差があるからです。

一住宅当たり延べ床面積の都道府県比較

マンションに住むということ

一戸建てに比べてマンションに住むデメリットは、まず第一に自由が効かず、狭いということが挙げられます。
集合住宅のため、常に他人を気遣い、ルールを守って暮らす必要があります。そして広さや採光が限られた狭い空間で、持ち物を少なくする、ペットを諦めるなど、上手に工夫して生活していく必要があるでしょう。

その代わり手に入れられるものは、立地の資産価値の高さ、管理の楽さ、セキュリティの高さなど、主に利便性の面でのメリットが目立ちます。
また高層階になると、窓から眺められる眺望も大きな魅力の一つ。
家にいる時間が少なく、とにかく立地がよく通勤が楽で、家は寝られればそれでいいという活動的な独身者や夫婦にとっては、こういった利便性のメリットや、売却時の資産価値は見逃せません。
また移動や作業が辛くなった高齢者世代にとっても、草引きや掃除の必要がなく、エレベーターですぐにコンビニやスーパーにアクセスでき、医療機関も近くにある街のマンションは、終の棲家としての選択肢に挙がってくるでしょう。

一戸建ての魅力とデメリット

対して一戸建ては、広い土地を求めるなら駅から離れることが多く、広い庭の管理や雨漏りなどのメンテナンスも定期的に必要です。防犯対策も自己責任で行い、建物を自分で守る必要があります。
また注文住宅では駅から遠かったり家のコンディションも様々なため、処分する時も「利便性」が目玉であるマンションに比べると売れにくいこともあるでしょう。

その一方で、何と言っても自分の思い通りの家を実現できるということが、揺るがない一番のメリットです。
家にいくらか興味があり、こんな家に住みたいなという理想を持っている方にとっては、それを実現するには一戸建ての注文住宅という選択肢しかありません。
お日様の光が好きな人は、あちこちに窓のある明るい家を作ることができます。
緑が好きな人は、広い庭に高木を植えて、緑に囲まれた住まいを実現できます。
理想の家を実現した人は感動のあまり、多少の通勤の不便さや手のかかる管理作業のことは、一切気にならないかも知れません。
このように、リスクも大きいですが、リターンも大きい。それが一戸建て住宅だと言えるでしょう。

新築とリフォーム、どっちがお得?

新築とリフォーム、どっちがお得?

新築かリフォームか。こちらも住宅における永遠のテーマです。
ここでは特に一戸建てについて説明しますが、この比較も、結論から言えば「どちらがお得かどうかは、その人による」ということになります。
両者の違いは大きく分けて、
「かかるコスト」
「その家の価値」
という二点から考えることができます。

新築とリフォームのコストの違い

ある人が、新築ではなくリフォームを選ぶ理由は何でしょうか。すぐに頭に思い浮かぶのはお金のことです。
古本、古着、中古車のように、「中古は安い」というイメージがあります。
安い中古を買って、安く直して住めば、お金が浮く。
建て替えずに元の家を直せば、新築よりもずっと安く済む。
これが一般的なリフォームのイメージです。
それでは実際、金額はどれくらい違うのでしょうか。

前述の通り、エリア、新築物件のグレード、中古物件の状態など様々な要素があるため簡単に比較はできませんが、一般的にはこれくらいの価格帯になることが多いようです。

  • 新築建築費用:2,000万円~4,000万円
  • 中古物件購入費+リフォーム費用:1,000万円~3,000万円

このように、金額で見れば1,000万円程度の差が生まれます。
では、その金額の代わりに発生するリフォームのデメリットは何かというと、

  • 設計プランに制限がある
  • 耐久性・耐震性に不安がある
  • ローンの金利が高くなり、借入上限も低くなる

といったことが挙げられます。
ちなみに固定資産税はリフォームしても築年数で計算され続けるため、かなりお得になりますが、上記のデメリットと、メリットである1,000万円をどう捉えるかによって、新築かリフォームかの選択が決まるでしょう。

世界から見る日本の「偏った」住まい

新築が建てられる数は、欧米などに比べて圧倒的に日本がトップだということをご存じでしょうか。
欧米の人々は、実はそのほとんどが中古物件に住んでいます。
それは石造り、レンガ造りで地震が少ないことによる家の寿命の長さや、歴史を大切にする国民性など、色々な理由がありますが、何よりも海外に「ハウスメーカー」というものが存在せず、新築を奨励する力学が働いていないということが、大きな理由の一つです。
なぜ日本でばかり新築が建てられるのか?
昔から日本は新築だらけだったのか?
パンフレットやTVCMで新築を選ぶ前に、そういった点を少しでも調べてみると、この国の住まいの形がおぼろげに分かってくるでしょう。
「住教育」はまさにそのような部分を学んでもらおうという取り組みです。
日本において中古物件は、価値が下落し続けます。
ところが西欧においては、価値が上がり続けるのです。
これは一体どういうことでしょうか?

まずは物件の価値を知ろう

まずは物件の価値を知ろう

この国においては、築30年を超えた中古物件は、タダ同然の価格で流通しています。
そのせいか、販売価格だけを見て人々はその物件の価値がゼロだと錯覚します。
価値がゼロだから、長くは保たないだろう。
価格が安いから、何かすごく不安だ。
こうした誤解によって、中古物件は解体され、そこに新築が建てられるのが今の日本によくある光景です。
なぜ日本では中古物件が流通しにくいのか?
それは家を買う人に、家の知識がないためです。

実は、リフォームの最も大きなメリットは、その「見過ごされた価値」を見つけ、自分のものにできる、というところにあります。
中古レコードを漁ってお宝を手に入れるように、いくらかの知識さえ付ければ、お宝を見つけることは容易いのです。
知識をつけたあなたは、この国において、素晴らしい物件がタダ同然の金額で売られていることに驚くでしょう。

古民家という宝

その代表格となるのが古民家です。
西欧で100年を経過した家は「ビンテージ」となり、人気が出て価格が高騰します。
ところが日本では「ゴミ」のような扱いとなり、古民家が建っていても不動産業者は土地の値段だけで販売し、買い手も解体と新築を前提にして購入します。
実は古民家は、適切なメンテナンスをしていれば100年どころか300年、400年と保ちます。
また耐震性が無いとされていますが、実際はよく考えられた免震構造で100年以上そこに立ち続けているのです。
構造材も大変貴重なもので、今は手に入らない巨大な梁や柱が惜しげもなく使われており、同じものを使って新築すれば1億円、2億円はかかると言われています。
デザイン的にも非常に優れ、この国の文化的な神髄と言える古民家を、「ゴミ」として解体するか、「宝」としてリノベーションするか、その判断を分けるのが住教育なのです。

※古民家について学びたい方はこちら。→ 古民家ポータルサイト クロニカ

新築の価値は下がるのが早い

新築の隠れたデメリットとして、価値下落のスピードが挙げられます。
上記の古民家とは対照的に、新築は建った瞬間からその資産価値が下がっていきます。
不動産としての建物の価値は、どんな家であろうと、この国ではおよそ20年もすればゼロに近くなってしまいます。
この不思議で不条理な現実をどう受け止めるか。
何よりも自由度の高い新築ですから、売る時のことは考えず、20年間自分の好きな家に住み、理想の暮らしを味わうことを選ぶのも良いかも知れません。
その快感や充実感は、他人に測れるものではないでしょう。
非常に個人的な満足度の高い新築の注文住宅。これを選ぶ人は、お金にいくらか余裕があるか、家に対してはっきりした理想像があり、それを実現したいと願う人に向いていると言えます。

リフォームは願いをどこまで叶えてくれるか

リフォームは願いをどこまで叶えてくれるか

とは言え、リフォーム派の人も「自分の自由にできる家」を望んでいることは間違いありません。新築に比べて制約のあるリフォームは、どこまでその願いを叶えてくれるのでしょうか。

結論から言えば、その家が木造住宅であれば、実は大きな構造以外はどうにでもできます。
家の基本的な構造は、土台と屋根と柱です。その枠組みを崩さなければ、内装はもちろん、壁や間取りや窓の位置なども変更することが可能です。
この自由度は古民家が最も大きく、リフォームやリノベーションに向いていると言えるでしょう。一般的な木造住宅でも鉄骨造、RC造に比べればはるかに自由にリフォームすることが可能です。
ただし、大きく触れば触るほどお金はかかります。
予算の中で、どこを直してどこを直さないのか、それを見極めるのがリフォーム工事の成功の秘訣です。

気に入った中古物件を見つけたら勝ち

リフォーム工事をどこまでするのか。それはあなたと、あなたが選んだ物件次第です。
気に入らない部分があればあるほど、工事のボリュームは増えていきます。反対に気に入った部分が多ければ、それだけお金が浮きます。
例えば玄関の床のタイルが気に入らない人は、それをはがしてコンクリートを打つでしょう。
ところが同じタイルを見て素敵だと感じた人は、コンクリート工事の数十万円を払わずに済むどころか、毎日素敵なタイルを目にして幸せを感じるのです。
元々あったL字キッチンが嫌で最新のアイランドキッチンを入れる人は、工事費におよそ100~200万円かかります。
一方、ずっとL字キッチンを使っていたから次もL字がいいと思っている人は、元々のキッチンを掃除してそのまま使うかも知れません。
このように、人によって気に入る、気に入らない、嫌だ、素敵だ、という基準は様々です。
誰かが気に入らない中古物件は、あなたにとって最高の中古物件かも知れません。
そのような家を見つけることができたなら、費用に関してはもうほとんど「勝ち」と言えるでしょう。

「あるものに合わせる」という考え方

巨額のローンを組み、人生をかけて行う家づくり。当然、つくる家は自分の希望を最大限に反映し、どこまでも自分の理想を追求するべきものだと思いがちです。
ところが海外ではあまりそういう考え方は一般的ではありません。
家は古くからそこにあるもの。
その容れ物に、自分を合わせる。
ちょっと不便なところは改修して、部屋のインテリアも自分好みにしますが、家そのものを我が物にしようという発想は少ないのです。
かつての日本もこれと同じような考え方でした。
代々継がれてきた伝統的な家屋。そこに住む人は、家を守り、家を大切にして、次の世代に継いでいったのです。
ところが、いつからかこの国では、家よりも住人の方が偉くなっていきました。
自分が我が物にした「家」は、次の人に手渡すものではなく、自分が不要になれば壊してしまう単なる「消耗品」として扱われます。
そういった考え方でリフォームを行うと、ここもあそこも気に入らない、自分の思うように変えたい、となって結局は新築と同じくらいコストがかかってしまうでしょう。
リフォームを行う時に大切なのは「そこにあるものに自分を合わせる」という考え方です。
一歩引いて、そこにある家に敬意を払い、どうやってその家と自分が仲良くなっていけるかをイメージしてください。
そうすればきっと、リフォーム費用は驚くほど安くなるはずです。

まとめ

一戸建てとマンション、新築とリフォームという切り口から「住み方」をお話してきましたが、このようにどれを選べばいいかは人それぞれで正解はありません。
ぜひ家選び、家づくりを始める前に、自分がどんな人間で、どんなことに幸せを見つけ、どういった時にストレスを感じ、どんな人生を送りたいのかをじっくり考えてみてください。
家とは自分の生活のあらゆるベースになるものです。
あなたは日々どんな暮らしをしたいですか?
坪単価、資産価値、メーカーの評判やローンシミュレーションなどの情報を集める前に、まずはそのシンプルな問いかけに答えを出してみましょう。

家選びのすべては、きっとそこから始まります。

投稿者プロフィール

大原 鉄平
大原 鉄平
古民家で暮らすためのポータルサイト「クロニカ」代表。
工務店へのインタビュー、取材などを行いつつ築90年の古民家をリノベーションした体験談をクロニカにて連載中。古民家鑑定士。
クロニカ
最新の投稿

pagetop