茅葺屋根を囲うことのメンテナンス
茅葺屋根は世界的に見ても世界最古で現在も使われている屋根材です。
日本でも縄文時代の竪穴式住居などで使われ、
現在も伊勢神宮や社寺建築、あるいは古民家でも使われている素材です。
長く愛されて使われてきたのは材料となる
茅(ススキなどのストロー状の植物)の入手が簡単であり
農閑期に共同作業=結でみんなで葺き替えていました。
性能的にも空気を多く含んでいますから断熱性に優れ、
雨漏りしないのは茅を棒状の束にしたことによる導水効果によって
表層だけに水が流れるためだそうです。
隙間を少しずつ開けることで水の流れが整理され雨漏りを防いでいます。
そのため経年変化でカヤが潰れて隙間が埋まると雨漏りします。
また茅は鳥などの巣の材料にもなるので
鳥が屋根に止まって茅を抜いて持ち去ったりします(笑
どんな材料も同じですがメンテナンスは必要です。
一般的に茅葺きは葺いてから20年程度で腐った部分などを抜きとったり、
縄の締め直しなどをする差し茅と呼ばれる作業をし、
30年以上になれば丸噴きと呼ばれる全面の噴き替えなどをします。
葺き替えと聞くと、全部を新しい茅で葺き直すと思うかもしれませんが、
実際は全使用量の1/4から1/3は屋根に使われていた古茅が再利用されます。
また使わなかった茅は堆肥として利用します。
田舎の方に行くとこの茅葺き、鉄板でカバーされているものをよく目にします。
茅の調達ができなかったのか、雨漏りしたからなのかわかりませんが
茅葺き屋根全体を鉄板(ガルバ鋼板)などで覆っています。
茅葺き屋根の多くは矩勾配以上の急勾配で屋根が造られているので
瓦などに葺き替える場合には小屋組から造り直さないといけないので出費を防ぐためと、
茅の調達などのルートが無い、職人などがいないという理由で鉄板屋根にしています。
最近は瓦屋根風のデザインなども見かけます。
しかしこれは長持ちしない補修方法です。
鉄板はたとえ錆びにくいと言われるガルバ鋼板などを使っても
10年ぐらいから錆び始めます。
錆が進むと穴が開き、穴が開くと水が茅の中に入って、
通気が悪いために蒸れて腐り始めます。腐朽(腐り)は
茅だけにとどまらず垂木などの屋根の構造部材にまで広がっていきます。
住人が雨漏りに気がつくようになったときには
多くの建物は腐朽や蟻害が発生して改修に大きな費用がかかる場合が多いのです。
茅は通気がよければ濡れてもすぐ乾きます。
夏の夕立などで雨が降ると、
茅は乾くときに周囲の熱を奪って(気化熱)建物を涼しくする効果もあります。
茅も呼吸しているのですが、鉄板で囲ってしまうことで茅自身を殺してしまうのです。
茅葺はやっぱり普通に茅を葺き替えることで長持ちする家になるのです。
また茅葺屋根でもしっかりとした施工をおこなうことで保証を受けることができます。
一般社団法人全国古民家再生協会の事業者会員で
茅葺技能士の資格者が葺替えた茅葺屋根にはリフォームかし保険をつけれます。
また一般住宅でなく公共的な建物でも保証をつけることができます
(保証引き受け 住宅保証機構株式会社)
投稿者プロフィール
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2001年 持続可能な循環型建築社会の創造を目指し古材FC事業を立ち上げ全国展開を開始する。
古材の利活用から古民家を地域の宝と捉え古民家の利活用をおこなうための事業として古民家ネットワークを創設。
「古民家鑑定士」「伝統再築士」を始めとする資格を創設し全国各地で古民家を取り扱う人材育成に力を入れ、古民家鑑定士は全国に1万人を超す。
現在は、古民家の安心と安全を担保するために基準を創り、ソフト面とハード面を兼ね備え全国各地で講演活動を実施している。
また本年、「内閣官房歴史的資源を活用した観光のまちづくり専門家会議専門員」として全国各地の地方自治体のコンサルティング活動も行う。
古民家ツーリズム推進協議会事務局長として、全国で古民家ツーリズムの推進もおこなっている。
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