木を腐らせないために
木材は経年変化により耐久性が増していくことはご存知だと思いますが、
その大敵は腐ることと、シロアリなどに食害を受けることです。
木材が腐るのは木材腐朽菌の活動によります。
木材腐朽菌はキノコの仲間です。
木材腐朽菌は菌糸と呼ばれる植物の根のようなものを木材の内部に伸ばし、
木材の主成分である
セルロースやヘミセルロースなどを分解し、栄養として成長していきます。
栄養がなくなると子実体(しじったい)というキノコの形となり胞子を放出します。
木材腐朽菌の繁殖条件は、
・水分:含水率35%以上。20%以下なら腐朽はほとんど始まりません。
・空気:具体的には酸素が必要です。
・温度
上記の3つが必要です。
イドタケ、ナミダダケ、などは24度以下の温度が生育に適しており、
24度〜32度はイチョウタケ、オオウズラタケなど、
32度以上はアラゲカワタケ、キガイガラタケなど
腐朽菌の種類によって生育に適した温度があります。
皆さんも海に木材が浮かんでいるのをご覧になったことがあると思います。
また縄文時代の木製の遺跡が土の中から出てきたのに原型をとどめていたり、
建物の杭として土中に埋めていた松が腐らずに残っていたりします。
土の中は非常に多くの水分を含んでいますがなぜ腐朽しなかったのでしょうか。
これは水分が木材の隅々まで回り、
空気を追い出したから木材が腐らなかったのです。
空気と温度を建物でコントロールすることは難しいので、
建物を腐朽から守るためには水分(湿気)をコントロールすることになります。
地盤はもともと水分を含んでおり、床下の地面から湿気が上がってきます。
床下の風通しを良くするか、
防湿シートなどの地盤からの湿気の上がりを遮断する措置を取る予防が必要です。
生活空間から降りてくる湿気
人は一晩のうちに約2Lの汗をかくそうです。
調理のためや暖房などで火を使うとそれも大量の水を空気中に排出します。
室内の湿度が高くなると床下にその湿気がおりますし、
浴室や台所などからの水漏れなども床下に降りてきます。
室内環境を
湿気のコントロールが出来る自然素材の土壁や畳柱が見える真壁から
クロス張りの大壁などに改修した場合には
換気回数を多くして湿気を排出することが大切ですし、
水回りなどは定期的に漏水の検査を行います。
雨漏り、給排水管からの水漏れ
屋根や外壁からの雨漏り、
また床下に敷設されている給水管や排水管が痛むと直接水が床下に広がります。
漏水は給水管からの漏水は比較的量も多く発見も早いのですが、
排水管の場合は発見が遅くなります。
また古民家などの場合には土管を排水管として使用しているケースも多く、
土管は1本の長さが短いため継ぎ目が多いので
その接合部分からの漏水などの可能性も考えられます。
冬場は空気が乾燥しており、床下の湿気は外部に出ていきますが、
梅雨から夏場にかけては逆に空気中の湿気が床下に流れ込みます。
また、大雨が降った際に床下が周囲の地盤より低い場合には雨が床下に流れ込みます。
そして温度差による結露
ガラスのコップに水滴がつくように温度差が起こると結露が発生します。
従来の伝統構法の床下は外気と同じ温度環境に近いため、めったに結露は起こりませんが、
改修を行い断熱材を入れたり、
金物で仕口などを補強した際には金物が結露し、木材腐朽の原因になります。
腐朽対策としては、
・構造的には、通気を良くすること。
・湿気が排出されるように、床下の高さを高くして風が通る構造
・柱などが外気に触れる構造(真壁構造)
・調湿の効果のある建材を使用すること(土壁、畳、木)など
使用材料としては、
ヒノキ、ヒバ、クリ、ケヤキなどの腐朽に強い木材を使用する。
水分量が多く腐りやすい辺材(白太)より心材(赤味)を使用するなどでしょうか。
投稿者プロフィール
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2001年 持続可能な循環型建築社会の創造を目指し古材FC事業を立ち上げ全国展開を開始する。
古材の利活用から古民家を地域の宝と捉え古民家の利活用をおこなうための事業として古民家ネットワークを創設。
「古民家鑑定士」「伝統再築士」を始めとする資格を創設し全国各地で古民家を取り扱う人材育成に力を入れ、古民家鑑定士は全国に1万人を超す。
現在は、古民家の安心と安全を担保するために基準を創り、ソフト面とハード面を兼ね備え全国各地で講演活動を実施している。
また本年、「内閣官房歴史的資源を活用した観光のまちづくり専門家会議専門員」として全国各地の地方自治体のコンサルティング活動も行う。
古民家ツーリズム推進協議会事務局長として、全国で古民家ツーリズムの推進もおこなっている。
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