住育のすすめ 13「中古住宅は、新築にないメリットがあります」

※この記事は、『住育のすすめ~住まいを考える50の方法~』(竹島靖著/角川SSC新書/2007年刊)を1節ごとにご紹介していくコンテンツです。

第3章 買う・借りる。

中古や賃貸で、かしこいリスク回避。

13 中古住宅は、新築にないメリットがあります。

 わたしは家族と財産を守るため、持ち家には一戸建ての中古住宅を選択しました。いわば自衛手段といえるでしょう。わたしの考える長所は5つです。

【長所1】竣工して数年たった中古住宅は、欠陥や施工ミスが見つけやすいです。もちろん不具合のすべてを発見できるわけではありません。殺されてもハンコをおしたくないのは不同沈下の物件。中古住宅で問題なければ、ほぼだいじょうぶだろうという仮説です。ボロ隠しされる場合もあるので、現況はリフォーム前にチェックすべきです。「建売住宅と同じく施工の途中は見えないが、建ってから何年も経過しているという意味においては、それだけ問題が発見しやすく、欠陥をつかまされる危険性は低くなる。外壁にクラックがあれば構造や基礎の欠陥を疑うことができるし、クロスや床、押し入れの中にカビが生えていれば結露するとわかるし、水はけ、建具の不具合等が、中古ゆえに確認もしやすい」(『欠陥住宅に泣き寝入りしない本』吉岡和弘・加藤哲夫・齋藤浩実著/洋泉社)

【長所2】化学物質の多くがすでに揮散しています。シックハウスが避けられるでしょう。日本では新築時、有害な化学物質がてんこ盛りで使われています。S駅近くの不動産業者も、化学物質づけを認識していました。化学物質がこわいので中古を探しているというわたしにこう賛同しました。正直な人です。「昔よりはマシになったけど建ててしばらくのあいだは、におうよね」。目黒の賃貸マンションに住んでいるころ、目がチカチカしたこともあります。ビニールクロスを張り替えたばかりの物件でした。窓を開ければ原稿用紙がバンバン飛んでいく。そんな風通しのいい家でさえこのありさま。

【長所3】まわりの状況が確認できます。持ち家の選定基準は、あとで取り替えにくい要素ほど重要だと思います。最悪の場合「見えざる瑕疵」があっても、柱や梁の交換は可能です。しかし隣人を取り替えることは不可能です。中古住宅は近所の状況をしっかり確認できます。新築の分譲マンションや建売住宅の多棟現場だと、こうはいきません。極端な話、隣にどんな人が住むか引っ越してみないと分からないのです。中古住宅へ引っ越してゆくのは転校生みたいな気分です。

【長所4】価格です。コスト・フォー・バリューを考えると、中古住宅は悪くない買い物だと思います。一戸建てならハンコをおした翌日、地震で全壊しても土地は残ります。

【長所5】資源を有効活用し、循環型社会の実現に役立ちます。4Rに貢献。4Rとは、リデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生)、リペア(修理)。

 もちろん短所もあります。通り一遍の調査では見つけられない「見えざる瑕疵」の可能性がゼロではないこと。あるいは経年劣化や不具合のある場合、経費や時間が必要になること。しかし、どんな住まいの形態にも短所やリスクはあるのです。自分のモノサシに即した決断をするしかありません。

 不動産探しをはじめる前に自分の希望を整理し、優先順位をつけて場数を踏んだほうがいいと思います。わたしは以下のポイントで物件を見て歩きました。①1981年の建築基準法改正を受けた「新耐震基準」の物件。②木造軸組の2階建て。③ビルトイン駐車場は避ける。④地盤調査書や設計図書が揃っている。⑤検査済証がある。

 それから、信頼できる第三者によるインスペクション(建物調査)は必須。わたしは、地下鉄K駅近くのS事務所や「既存住宅性能表示」を取り扱う会社へ直接足を運びました。同僚と飲みに行く回数を減らしてでも、インスペクションは、やるべきです。

投稿者プロフィール

竹島靖
竹島靖
1960年生まれ。東京都在住。コピーライター、プランナー、日本住育の会代表。日本では導入例がきわめて少ない既存住宅性能表示を利用して耐震診断をおこない、中古住宅を購入。その後に耐震工事を実施。「日本住育の会」は、「よりよく生きるために、よりよく住まうことを学ぶ運動」をおこなう非営利の団体。2006年5月設立。
住育二部作の後編は、『危ない「住活」』(竹島靖著/竹書房新書/紙版2013年刊・電子書籍版2019年刊)。著作は、単著2冊および共著5冊で合計7冊。コピーライターとしては、宣伝会議賞金賞・銀賞・銅賞など15の賞を受賞。

【住育】じゅういく
①「住まい」に関する教育。
②キレない子どもをつくる、正しく子どもを導くなどに限らない、体系的な見識。
③知らないことは教えられません。子どもたちに「住育」する前に、まず大人が最低限の「住まい観」を養うべきです。
④よりよく生きるために、よりよく住まうことを学ぶ運動。
⑤たんなる営利目的の手段として「住育」が使われるときは、警戒が必要です。
(日本住育の会による定義/2007年10月現在)
category:住育のすすめ  |    |  2021.01.19

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