木の都市伝説

「都市伝説」
昔から言い伝えられているがどうも信憑性に欠けるとか
専門的な見地からみると明らかに誤解をされている・・・という意味です。

「木の年輪の幅が広いほうが南」
秋田県立大学高度加工研究所所長の林知行氏によると
森の中の切り株を見てみると年輪の広い方角はまちまちであることからして
この説は正しくないということなのだそうです。
日当たりの良いところに植えられた木の成長が良いというのは事実なので
「南側の樹が良く育つ」ということについては良いのですが、
ここからいきなり理論の飛躍によって
「南側の年輪が広くなる」ということになってしまって
現在まで言い伝えられてきたのです。

また
「樹木に聴診器をあてて音を聴くと樹液の流れる音がする」
実際の樹液の流れるスピードは、夏の一番蒸散の激しい時でさえ時速20cm
樹液の流れる音がするはずはなく
なんらか他の音がしているというのが本当の真相です。

林知行氏によると
環境に関する様々な都市伝説の中で、もっとも重大な誤解は
「木を伐って使うことは、環境破壊である」ということだそうです。

樹木の場合は幹や枝という形をとって、C(炭素)を固定したままに出来るので
「木を植えましょう!」とうことになるのですが
森林というものは、若いうちは頑張ってC(炭素)を貯め込むことができるのですが、
一定の年数が経つことによってその能力は頭打ちになってしまいます。
その能力を復活させるには「木を伐る」ことです。
伐ってあげることで新しい枝などがでてくることで、CO2を吸収する能力が再生するのです。
伐ったものをそのまま腐らせたり、燃やしたりすれば再び、CO2を排出してしまうので、
「木」という状態のまま、住宅などに利用することで、CO2を固定したままにします。
定期的に木を伐って「木」という形で利用・固定化することが環境にも良いということになります。

産業革命以来、何かを燃焼することでエネルギーに転換し生活に利用するというサイクルができてから
いったん崩れてしまったバランスは
「一生、薬を飲み続けなくてはいけない病気になったようなもの・・・」なのかもしれません。

「都市伝説」といわれる根拠のない固定概念に惑わされることなく
「正しい持続可能な循環型建築社会」を発信していきたいと思います。

投稿者プロフィール

井上幸一
井上幸一
2001年 持続可能な循環型建築社会の創造を目指し古材FC事業を立ち上げ全国展開を開始する。
古材の利活用から古民家を地域の宝と捉え古民家の利活用をおこなうための事業として古民家ネットワークを創設。
「古民家鑑定士」「伝統再築士」を始めとする資格を創設し全国各地で古民家を取り扱う人材育成に力を入れ、古民家鑑定士は全国に1万人を超す。

現在は、古民家の安心と安全を担保するために基準を創り、ソフト面とハード面を兼ね備え全国各地で講演活動を実施している。

また本年、「内閣官房歴史的資源を活用した観光のまちづくり専門家会議専門員」として全国各地の地方自治体のコンサルティング活動も行う。

古民家ツーリズム推進協議会事務局長として、全国で古民家ツーリズムの推進もおこなっている。
category:木材  |    |  2021.06.18

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