住育のすすめ 9「買った土地に、家が建たない場合もあります」

※この記事は、『住育のすすめ~住まいを考える50の方法~』(竹島靖著/角川SSC新書/2007年刊)を1節ごとにご紹介していくコンテンツです。

第2章 建てる。

最低でも100年使うという発想。

9 買った土地に、家が建たない場合もあります。

 げっ、マジかよ、そんな不条理なこと、あるワケないだろ。責任者出てこい。
 というあなたの主張はごもっとも。ですが、あなたはウブな人。
 不動産業界は、魑魅魍魎の跋扈する闇の世界。百鬼夜行のダークサイドに落ちてしまった悪徳業者もいるのです。会わないほうがいいタイプの責任者もいます。

 2005年から2006年にかけて、不動産の購入でお世話になった人が教えてくれました。「○○○には、○○○がらみの業者もいれば、じっさいの○○○もいるから気をつけたほうがいいよ」。伏せ字ばかりですいません。

 不動産を探し始めてから、直接あるいは間接でスリリングな話をたくさん聞きました。買った土地に家が建たない。残念ですがホントにある話。

「東京に空が無い」と書いたのは昔日の詩人ですが、東京には土地もありません。家を新築する手頃な土地が少ないのです。そこで中古物件を探し、さら地にしてから新築することを考える人もいるわけです。実際、知人の不動産業者に聞くと、築後25年すれば建物の価値はほとんどゼロ査定。わたしが土地を物色しているときも「古屋付き物件」という呼び方で、情報を教えてくれた業者もいます。

「買った土地に現実の家が建ってるんだから、建たないはずないでしょ」というのが一般常識です。しかし、ジャーン、建築基準法の登場。その家が建ったときには順法でも、改正された建築基準法に照らすと住宅の建てられないケースもあるわけです。なので、再建築は不可という現実です。あるいは、接した道路が位置指定を受けていないなどの理由により、昔の時点で堂々と違法建築だった可能性もあります。

 土地には、いろんな地雷が埋まっています。たとえば、よく紹介されたのが「建築条件付き」の土地。得意満面の業者いわく「フリープランで自由に建てられます」。ですが、その多くの実態は建売住宅でした。フリープランは、ちっともフリーじゃありません。

 とまあ、これぐらい脅かしておいたら安易にハンコをおしたりしないですよね。もちろんスキルと♥を兼備したプロの不動産業者もいると思います。ただ、すべての業界でそうですが、必ず悪徳業者は含まれているのです。不動産の売買には、専門用語がバンバン出ます。契約書なども分かりにくい。いい物件と出会うためには、いい業者との出会いが必須だと思います。信頼関係の持てる業者がいないと、不動産探しはうまくいきません。やはり、ここでも専門家としての能力や相性という側面があると思います。それが心からの実感です。

 土地探しで失敗すると、マイホーム計画はいきなり破綻します。入門書でいいから1冊か2冊、土地に関する本を読んだほうがいいと思います。100パーセント理解できなくても気にしないことです。少なくとも相手が何を言ってるか、だいぶ分かるようになります。わたしは、候補地が見つかったら第三者に見てもらおうと考えていました。たとえば建ぺい率、容積率、斜線制限、建築協定。土地には、いろんな制約が発生します。その土地でどんな家だったら建てられるか、建築士に現地を見てもらう手もあります。

 不動産の購入は、ほとんどの人が経験値ゼロで挑みます。海千山千のプロたちにまじって正当な権利を主張する。本を読んだり、セミナーに行く。第三者の専門家に相談できる人を見つける。とにかく、できることはすべて実行しましょう。落とし穴で遭難する確率は、だいぶ減るはずです。グッドラック。

投稿者プロフィール

竹島靖
竹島靖
1960年生まれ。東京都在住。コピーライター、プランナー、日本住育の会代表。日本では導入例がきわめて少ない既存住宅性能表示を利用して耐震診断をおこない、中古住宅を購入。その後に耐震工事を実施。「日本住育の会」は、「よりよく生きるために、よりよく住まうことを学ぶ運動」をおこなう非営利の団体。2006年5月設立。
住育二部作の後編は、『危ない「住活」』(竹島靖著/竹書房新書/紙版2013年刊・電子書籍版2019年刊)。著作は、単著2冊および共著5冊で合計7冊。コピーライターとしては、宣伝会議賞金賞・銀賞・銅賞など15の賞を受賞。

【住育】じゅういく
①「住まい」に関する教育。
②キレない子どもをつくる、正しく子どもを導くなどに限らない、体系的な見識。
③知らないことは教えられません。子どもたちに「住育」する前に、まず大人が最低限の「住まい観」を養うべきです。
④よりよく生きるために、よりよく住まうことを学ぶ運動。
⑤たんなる営利目的の手段として「住育」が使われるときは、警戒が必要です。
(日本住育の会による定義/2007年10月現在)
category:住育のすすめ  |    |  2020.09.19

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