温かな記憶

私は、時々忘れないように思い返す癖があります。
それは、幼い頃の懐かしい暮らしの記憶。

おばあちゃんが鏡台の前で長い髪を結う後ろ姿や、
台所の段差に腰掛けて、豆の筋を取ったり、擂り粉木をする母。
盆や正月には、叔母さんたちも大勢で炊事する風景。
暗く冷えた納戸が恐ろしかったことや、そこから梅干しやらっきょうが出てくること。
毎日早朝から店を開ける祖父の姿勢、毎日訪れる銀行員さん、隣の家のおばあちゃんの畑。。。

今では、見ることのなくなった景色です。

幼い頃は、古くてボロい自分の家は恥ずかしいと思っていました。
新しく建てられた友達の家が羨ましく思ったものでした。
でも、家を改装するという段で、私はとてもさみしく、切なく感じたこと覚えています。
腰掛けていた段差も、人の行き交いでツルツルになった板張りも、もうなくなってしまう…
便利で綺麗になる嬉しさよりも、なくしたくない尊いものを感じたのでした。

日々の営みが、無意識に蓄積してくれた心の映像。
その1シーン1シーンが私を作っていたのかもしれない。
そう思うと、人は家とともにあるのではないかと思ってしまいます。

投稿者プロフィール

山城京子
2015年より住育学校福岡第一校を開講。家を建てよう・家を持ちたいと思う消費者に住まいの「本当のコト」を伝えている。また住育コンシェルジュとして、住まい手の求める造り手との架け橋を行なっている。
昨今では、空き家の利活用や発生抑制に向けて、地域でセミナーやファシリティトを行い、住教育の推進に力を入れて活動中。
一般社団法人住教育推進機構福岡支部長
一般社団法人全国古民家再生協会福岡第一支部会員
古民家鑑定士
古民家ツーリズムまちづくりプランナー
category:住教育  |    |  2021.03.21

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