地域扶助

一昔前まで家を建てることは、「普請」と言われ、地域の公共工事でした。

「普請」とは、広く平等に賃金・労力の提供を奉仕することで、社会基盤を地域住民で作り維持していたわけです。
家づくりの材料は、もちろん身近にある地域の自然のものでしたから、例えば山には「茅場」があり、地域の皆で育て、刈り取った茅は、それぞれの家の小屋裏に持ち帰り保管乾燥され、屋根の補修が必要な家があれば、また持ち寄って皆で葺き替えました。
土壁の左官作業も地域の皆で塗りましたし、三和土も皆で地ならしをしました。

今もそうですが、「住まい」とは、誰の元にもあるべく生きるために大切なもので、皆が皆のために協力することは当たり前で、昔は特にその地域扶助の精神が息づいていました。
ローテーションで家のメンテナンスをし、職人さんも地域の皆も住まい手のより良い暮らしを祈願して、家が長く繁栄していくように。
家とは、そうしてあるものでした。

機能的で性能の良い家が増えて、家はあっという間に建つようにもなりましたが、以前のように、時間をかけて建てられる家づくりの中では、家への愛着や地域とのつながりも生まれます。

コミュニティが希薄になった現代で、地方の創生やまちづくり、持続可能な循環型社会へ向かうために、先人の暮らしの在り方から学び生かしていくことも大切なことだと思います。

投稿者プロフィール

山城京子
2015年より住育学校福岡第一校を開講。家を建てよう・家を持ちたいと思う消費者に住まいの「本当のコト」を伝えている。また住育コンシェルジュとして、住まい手の求める造り手との架け橋を行なっている。
昨今では、空き家の利活用や発生抑制に向けて、地域でセミナーやファシリティトを行い、住教育の推進に力を入れて活動中。
一般社団法人住教育推進機構福岡支部長
一般社団法人全国古民家再生協会福岡第一支部会員
古民家鑑定士
古民家ツーリズムまちづくりプランナー
category:住教育,古民家,雑学  |    |  2020.03.03

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